木造住宅の基本構造とは?木造住宅の構造・部材の名称や工法別のメリット・デメリットも解説

木の家って居心地がいいですよね。住まいが自然の素材である「木」で作られていると、安らぎを感じることができます。

木は鉄やコンクリートとは異なり、とても柔らかい素材なので、ケガの心配が少なくてすみます。キズもつきやすいですが、それも良き味となり、奥ゆかしさをもたらしてくれるでしょう。

この記事では、木造住宅の基本構造や各部の名称、どんな木で家が建てられているか、について詳しく解説します。

木造住宅の構造

木造住宅と言っても、日本古来の伝統工法や欧米から渡ってきた工法など、その工法はさまざまです。まずは、現代の木造住宅を建てる際によく用いられている工法をご紹介します。

木造軸組工法

木造軸組工法とは、日本の伝統的な木工法を発展させたもので、「在来工法」とも呼ばれます。柱と梁を使って建物を支えるのが特徴であり、一般的に木造建築といえばこの工法を指します。

木造軸組工法で作られた現代の家は、その構造から壁が多くなっています。壁が多くなったのは、住まいの環境の変化によって遮音・断熱のために壁の必要性が高まったからでしょう。

枠組壁工法(ツーバイフォー)

枠組壁工法(2×4:ツーバイフォー工法)とは、柱や梁を組み合わせるのではなく、均一サイズの木材を壁・床・天井・屋根の部分に貼り合わせて構築する工法です。アメリカやカナダでは約9割の木造住宅がこの工法を採用しており、世界各国で広く利用されています。

壁に用いられる木材の断面が2✖️4インチであることから、ツーバイフォーという名がつけられました。デザインは大体洋風になりますが、付け柱を用いることで、畳が似合う和室を作ることも可能です。

木造軸組工法のメリット・デメリット

古くから採用されている木造軸組工法ですが、どうして日本ではこの工法が長く用いられているのでしょうか。

木造軸組工法のメリットとデメリットに触れながら、より深く、この工法について理解を深めましょう。

木造軸組工法のメリット

まずは、木造軸組工法のメリットについて解説します。

メリット1.デザイン性の高い家を作れる

壁を入れる場所を自由に決められるため、自分の好きなように空間やサイズを変えられる点が挙げられます。造軸組工法で家を建てれば、完成後しばらくしてからも、部屋の分割といった「間取り変更」が簡単に行えます。

そのため、リフォームといった後から手を加えることを前提に家を建てる場合には、木造軸組工法がおすすめです。日本住宅で最も多く用いられている工法なので、どの工務店でも基本的には対応してもらえるでしょう。

メリット2.開口部を広く取れる

木造軸組工法は、柱と梁を中心に家を組み立てていくため、開口部を広く取ることが可能です。開口部を広く取ることで、風通しや採光の効率を高められるので、快適な暮らしを実現できるでしょう。

木造軸組工法のデメリット

他の工法が現場にいく前に作業を進めておけるのに対し、木造軸組工法は現場作業が多いため、工期が長くかかる可能性が高いです。一般的な家で、完成まで4ヶ月から半年ほどかかるため、急いで家を建てたいという人にはおすすめできません。

枠組壁工法(2×4工法)のメリット・デメリット

枠組壁工法(ツーバイフォー)のメリットとデメリットを解説していきます。

枠組壁工法(2×4工法)のメリット

まずはメリットから解説します。

メリット1.地震に強い

ツーバイフォーは、釘と金物で枠と面をしっかりと合わせた箱形のパネルであり、この集まりによって建物を支えます。そのため建物全体が一体となり、地震や台風に対しても揺るがない家を作ることが可能です。

メリット2.省エネルギー住宅を実現できる

もともと木材は、鉄やコンクリートと比べ熱を伝えにくい材料である上、ツーバイフォーについては、空気層を閉じ込めたパネルで家を組み立てます。そのため壁どうしや、壁と床などの繋ぎ部分の空気の流れはなく、気密性の高い住宅を建てられるのです。

この区画された家に断熱材を入れることで、断熱性能も効率良く高めることができます。

枠組壁工法(2×4工法)のデメリット

ツーバイフォー住宅のリフォームをする際、現状の設計図を確認して取り除ける壁かどうかの判断をした上で、リフォームの計画を立てなければなりません。

なぜならツーバイフォー工法は、壁式の区画ルールがあるため、それに従う形で設計をしなければならないからです。これは、設計の自由度を制限するデメリットと言えるでしょう。

木造住宅の構造・部材の名称を知ろう

木造住宅の構造だけでなく、骨組みに使用される各部の名称とその役割についても理解しておくことが重要です。

木造軸組工法の一つの例として、建物を横から見た図とその部材の名称をまとめてみました。

棟木(むなぎ)屋根の骨組みで一番高い部分
母屋(もや)屋根を支え、垂木を受ける
小屋束(こやづか)梁の上に立ち、母屋を支える
垂木(たるき)棟木、母屋、軒桁の上に渡して、屋根の下地を支える
小屋梁(こやはり)軒桁に結合し、天井を支える
間柱(まばしら)壁をつくるための垂直な柱
梁(はり)柱で支えられている横材
大引(おおびき)根太を支える部分
基礎(きそ)地盤の上につくられ、建物全体を支える
床束(ゆかづか)床を支え、大引を支える部分
束石(つかいし)床束を支える、石やコンクリートで出来ている基礎の部分
土台(どだい)基礎の上にのった横材で、建物全体の重さを支える
根太(ねだ)大引の上にある部材で主に床材を支える
管柱(くだばしら)胴差しや桁などで区切られた柱で、通し柱とは異なる
胴差し(どうざし)軸組を構成する部材で、1Fと2F境の床位置にあたる
筋交い(すじかい)柱や梁、胴差し、桁の間に斜めに入った木材で、耐震性を高める
軒桁(のきげた)垂木を支える

一般の方にとって「初めて聞く言葉」ばかりだと思うので、少し難しいと感じた方も多いかもしれません。

ここでは、木造住宅が基本的にこんな風な構造になっているのだな、と感じてもらえるだけで十分ですので、全て覚える必要はありません。

木造住宅で知っておきたい「構造計算」とは?

構造計算とは、建築構造物を建設する際に建物の重量や荷重などを計算して、地球の重力や自然災害に耐える能力を評価するためのプロセスです。これにより、建築物が地震や台風などの外部要因に耐えられるかどうかを確認し、安全性を確保します。

大切なプロセスである「構造計算」ですが、実は国内のほとんどの木造住宅で行われていないのが現状です。ある調査によると、日本国内で建てられた木造住宅の約80%(2階建て以下)が構造計算を受けていないと言われています。

この状況の理由は多岐にわたりますが、構造計算によって柱や梁などの構造材が増加することや、専門の構造設計者に依頼する必要があるため、それに伴う設計費用の上昇などが主な要因とされています。

もう一つの計算方法「壁量計算」とは?

壁量計算とは、構造計算をかなり簡略化した手法を指します。この計算では、地震や台風の外部からの力に対処するために、木造住宅において耐力壁の配置、材料、厚みを設定するものであり、主に2階建て以下かつ一定規模未満の住宅に適用されます。

通常の建築士であっても行うことができ、手軽で迅速に計算できるのが特長であり、多くの工務店で標準的に実施されています。

※既にご存知の方も多いと思われますが、壁量計算は厳密には「構造計算」には含まれません。

まとめ

本記事では、木造住宅の工法や木造住宅の構造・部材の名称、構造計算についてを詳しく解説しました。

木造建築の歴史は古く、非常に奥深いものです。

様々な工法・材質がある現代ですが、ここで改めて木造(木)の良さを見直してみてはいかがでしょうか。